セールスイネーブルメントとは?営業力を底上げする具体的な取り組みを解説

セールスイネーブルメントとは営業組織に関わるさまざまな改革を実施し、営業力の底上げを図る取り組みです。
具体例としては、営業ナレッジの蓄積や人材育成プログラムの整備、営業コンテンツの作成、課題の可視化などが挙げられます。
顧客満足度を向上させ売上拡大が期待できる施策として、セールスイネーブルメントの構築は重要です。
本記事では、継続した営業力の向上を実現するため、セールスイネーブルメントとは何かを解説したうえで、注目されている背景や具体的な取り組みの仕方を紹介します。
営業組織の改革に有効な施策を検討中の担当の方にとって、押さえたいポイントを網羅して解説します。
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目次
セールスイネーブルメントの定義とは
セールスイネーブルメントとは、受注率アップなど営業活動のパフォーマンス向上を目指し、営業組織の生産性を上げるための取り組みで、直訳では「営業の有効化(sales enablement)」を意味します。
セールスイネーブルメントの誕生は、1990年代後半にドリュー・ランセン(Drew Larsen)氏とジョン・アイエロ(John Aiello)氏が取り上げた営業における課題により、その必要性が説かれたことに起因すると考えられています。
実際にセールスイネーブルメントが広まったのは2010年以降で、バイロン・マシューズ(byron matthews)氏の著書『営業力を強化する世界最新のプラットフォーム セールス・イネーブルメント』が人気を博すなど、日本でも徐々に導入されつつある仕組みです。
しかし、日本ではいまだにセールスイネーブルメントに取り組む企業は多いとはいえないのが現状です。
日本でのセールスイネーブルメント分野の第一人者として知られる山下貴宏氏が、「成果に直結する人材育成の仕組み」と表現しているように、セールスイネーブルメントは単なる営業支援を目的とするものではありません。
営業組織の人材育成により、個人の能力やトップセールスのみに依存した属人的な営業から脱却し、営業チーム全体の底上げを図る役割を担います。
セールスイネーブルメントが注目される背景

近年、日本でもセールスイネーブルメントの概念や取り組みが普及しつつあり、その効果も期待されています。
注目される背景には、主に以下の課題の存在があります。
- 営業活動の属人化
- 顧客ニーズの多様化
- セールステックの普及
それぞれの課題に対し、セールスイネーブルメントがなぜ注目されているのか解説します。
営業活動の属人化リスク
従来の営業組織では、個人の経験や勘に頼る属人的な営業スタイルが主流で、営業活動が統一化・標準化されていませんでした。
一部のハイパフォーマーの成績に依存する体制では、インサイドセールスや若手メンバーの育成が後回しになり、継続的な営業人材の育成やチーム全体の成果につながらないことが課題です。
セールスイネーブルメントによる営業組織の改革を実施することで、こうしたリスクを回避し、誰でも一定の成果を出せる営業組織の構築が期待されています。
顧客ニーズの多様化への対応
市場の成熟やインターネットの普及により顧客のニーズはますます多様化して複雑になってきているだけでなく、トレンドの移り変わりも早くなっています。
多様な需要に応え、顧客へのアプローチの質を上げるうえでも、セールスイネーブルメントは欠かせない存在です。
マーケティング部門から営業部門までが連携し、最先端のソリューションをタイムリーに提案できる体制が求められています。
セールステック普及にともなう競争激化
DXの推進により、営業活動にもSFA(HTMLシステム)やCRM(顧客管理システム)などのセールステック(Salestech)の導入が急速に進んでいます。
営業プロセスのデジタル化が進んだことにより、効率的な営業活動やカスタマーサクセスの実現が期待されており、営業DXは避けては通れない課題です。
すでに多くの企業がセールステックを導入しており、自社が未導入であれば競争上のハンデとなります。
また、導入済みであってもツールを十分に活用できていなければ、得られるはずの成果は見込めません。
セールステックの市場規模が拡大する一方で、競合他社との競争は激化しています。
単にツールを導入するだけでなく、セールスイネーブルメントと連携しながら、自社ならではの営業スタイルを確立することが、他社との差別化につながります。
セールスイネーブルメントの具体的な取り組み

セールスイネーブルメントの具体的な取り組みには、主に以下の5つの領域があります。
- 営業ナレッジの蓄積
- 営業人材の教育
- データ分析
- 営業コンテンツの作成
- 顧客情報の管理と活用
セールスイネーブルメントの具体的な取り組み
1.営業ナレッジの蓄積
営業組織のパフォーマンスを安定的に高めるには、成功事例やノウハウなどナレッジの可視化と共有が不可欠です。
営業チーム内で商談の成功事例やプレゼン資料、トークスクリプトなどを蓄積し、インサイドセールスへ応用したり若手メンバーが活用できるよう整備したりすることで、営業組織全体の成績底上げが可能になります。
セールスイネーブルメントの具体的な取り組み
2.営業人材の教育
営業人材の育成プログラムに関する改革も、セールスイネーブルメントの重要な役割です。
新人の立ち上がりを早期化し、好成績を生み出すパフォーマーを輩出するためには、従来のOJTだけでなく体系的な育成プログラムを準備する必要があります。
例えば、スキルに合わせたトレーニングプログラムやコーチングなどのオンボーディング施策を組み込むことで、継続的な人材開発を担う仕組みを整えられます。
育成環境の整備によりラーニングカルチャーも育ち、自発的に学ぶ文化の醸成も可能です。
セールスイネーブルメントの具体的な取り組み
3.データ分析
SFAやCRMなどのツールでモニタリングした営業データを収集・分析し、必勝パターンや課題を抽出して、実践に活用することもセールスイネーブルメントの取り組みの一つです。
データとして数値化することで、売上への貢献度や失注案件などを客観的に分析できるため、注力すべき課題に目を向けるきっかけになります。
データを分析する際は、施策で設定した営業活動のKPIを指標として、定量的に測定して成果を検証することが重要です。
得られたフィードバックは戦略に反映させ、達成度に応じてPDCAサイクルを回すことで定着させることが営業成果の向上につながります。
セールスイネーブルメントの具体的な取り組み
4.営業コンテンツの作成
セールスイネーブルメントではプレゼン資料や提案資料、製品説明資料などの営業コンテンツを標準化することが重要です。
属人化された営業活動では、個人が作成した営業コンテンツを使うケースも少なくありません。
また、資料が共有されていたとしても、必要なタイミングで提供できなければ営業活動のパフォーマンスに影響を与えます。
セールスイネーブルメント構築の際、営業コンテンツを見直し、必要に応じて整備することで、顧客のニーズに応じた最適な商談環境の整備に注力できるようになります。
セールスイネーブルメントの具体的な取り組み
5.顧客情報の管理と活用
成果向上や営業活動の効率化には、顧客情報の管理と活用も欠かせません。
顧客ニーズや行動傾向を正確に把握してターゲティングし、営業レポートなどの情報から適切なアプローチに活かすことが重要です。
例えば、見込み顧客(リード)を育成して自社製品の購買につなげるナーチャリングの実践や、カスタマーエクスペリエンス(CX)の向上などに役立ちます。
顧客情報は一元管理し、リアルタイムでチーム全体に共有できる環境を整えることで、営業活動の生産性向上が期待できます。
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セールスイネーブルメント導入で期待されるメリット

セールスイネーブルメントの導入により、営業活動の質が高まり、成果を継続的に上げるための仕組みを作れます
ここで挙げるメリットにより、個人のスキル強化にとどまらず、営業組織全体で再現性の高い「売れる営業」を目指せます。
属人化を解消してチーム全体のスキルを底上げする
担当者個人のスキルや経験に依存した営業活動は、組織としての持続的成長を妨げる原因です。
属人性が高いままだと、特定のメンバーが退職した際にノウハウが失われ、営業力が一気に低下して成績が下がるリスクもあります。
セールスイネーブルメントを導入することで、ハイパフォーマーに頼ることなくチーム全体で成果を担う体制を整えられます。
また、営業ナレッジの共有、営業プロセスの標準化、データ活用の仕組みによって、誰でも一定水準の成果を出せるようになり、属人性を排した組織的な営業活動が実現できることもメリットです。
人材育成の仕組み化により継続的に営業人材を確保できる
従来の営業人材の育成では、先輩社員によるOJTや経験則に頼ることが多く、属人化や品質のばらつきが課題でした。
セールスイネーブルメントでは、新人のオンボーディングからハイパフォーマーの育成までを視野に入れた体系的な人材開発プログラムを構築し、実践的なトレーニングを行います。
研修、ロールプレイング、コーチングなどを段階的に組み合わせることで、個々のスキルに応じた育成が可能となり、立ち上がりの早期化と継続的な成長の両立が可能です。
再現性のある仕組みの醸成により、優秀な人材の輩出が継続的に行えるようになります。
施策成果の可視化で改善すべきポイントが明確になる
セールスイネーブルメントには、各施策の成果を定量的に測定し可視化することで、営業活動の改善につなげるサイクルを構築できるメリットがあります。
何が成果を生み、何が阻害要因となっているのかを客観的に分析できるため、場当たり的な施策ではなく、生産性・再現性の高い営業活動を効率的に創出できます。
データを分析したレポートで施策を検証し、改善すべき点を即座に特定できるようになることは、営業リーダーやマネジメントにとっても大きなメリットです。
部門連携の強化で効率的なマネジメントが可能になる
営業成果を最大化するには、営業部門だけでなく、マーケティング部門や開発部門、カスタマーサポート部門など他部門との連携が欠かせません。
セールスイネーブルメントのメリットは、リード情報や顧客対応の履歴などをチーム全体で共有する体制を構築できることです。
各部門が断片的に活動するのではなく、一貫した顧客アプローチが可能となり、営業活動の精度とスピードが大きく向上します。
また、営業現場だけでなくマネジメント層の業務も効率化できます。
滞留している案件はどこか、成果が上がっているプロセスは何かといった情報を可視化することでマネージャーの指導が効率的になり、セールス全体のパフォーマンス向上につながります。
営業コンテンツの共有により「誰でも売れる仕組み」を作れる
営業活動では、提案資料、業界別の事例、プレゼン資料など、さまざまな営業コンテンツが必要です。
セールスイネーブルメントでは営業コンテンツを蓄積・整備・見直しすることで、インサイドセールスやフィールドセールスのメンバーがいつでも活用できる仕組みを構築します。
また、ツールを活用した営業活動により、精度の高いコンテンツがリアルタイムに提供され、商談の創出や提案力の強化に直結します。
営業現場での負荷を軽減しながら、最適な営業支援体制を築けることがセールスイネーブルメントのメリットです。
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セールスイネーブルメント構築を進めるべき企業の特徴

セールスイネーブルメントの構築は、多くの企業にとってメリットのある取り組みです。
なかでも、以下の特徴に当てはまる企業では、より大きな成果を得られる可能性があります。
- 営業組織が大きい企業
- 複雑な製品を提供する企業
- 急拡大している企業
- BtoB企業
セールスイネーブルメントの導入手順や成功事例など、ベストプラクティスの具体例は以下の記事で詳しく解説しています。
実際の導入事例を参考にすることで、導入を成功させるポイントが明確になります。
営業組織が大きい企業
営業組織の規模が大きい企業では、トップセールスのノウハウが個人や限定されたチームにとどまった状態になり、組織全体の成果につながりにくくなることがあります。
セールスイネーブルメントを導入すると、優秀な営業担当者の知見を営業部門に広く周知でき、属人化の解消と再現性の高い営業プロセスの構築が可能になります。
営業ナレッジを蓄積して共有し、体系的な営業人材育成プログラムの整備で、営業組織のパフォーマンスを底上げするのに役立つのがセールスイネーブルメントです。
複雑な製品を提供する企業
IT・医療・製造業など、製品やサービスの構造が複雑な企業では、営業担当者が専門知識を備えて的確なソリューションの提案が求められます。
セールスイネーブルメントを活用すれば、製品知識の教育やコンテンツ整備を通じて、担当者の習熟度を標準化し、商談成功率の向上を図れます。
技術的ハードルの高い業界にこそ、セールスイネーブルメントの構築は有効な仕組みです。
急拡大している企業
急成長中の企業では、予測以上の市場規模の拡大や組織の急拡大により、人材育成や営業品質の維持が追いつかないという課題が顕在化しやすくなります。
セールスイネーブルメントの導入により、短期間での立ち上がりや継続的な人材育成、営業力の底上げが可能になって成長に必要な営業基盤が整うため、成長のブレーキとなるボトルネックを排除できます。
BtoB企業
BtoB企業では、意思決定プロセスが複雑かつ長期化しやすく、関係構築力の高い営業が重視されます。
そのため、営業担当者間の情報共有、提案内容の最適化、ナレッジの蓄積が成果に大きな影響を与えます。
セールスイネーブルメントは、BtoB特有の長期的かつ多層的な営業活動を組織的に支える仕組みとして有効です。
営業プロセスの可視化や営業コンテンツの整備を通して、提案力・信頼構築力の強化につながります。
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セールスイネーブルメント構築を助けるツール・サービス
セールスイネーブルメントを効果的に構築するには、SFAやCRMなどの営業支援ツールの活用も重要です。
営業システムを活用して営業活動をモニタリングすることで、進捗状況の可視化や成果管理の効率化が可能となり、営業プロセス全体を把握しやすくなります。
ツールの活用により、迅速に成果を生み出す行動や課題の特定ができるようになり、目標達成に寄与します。
こうしたツールの導入や運用設計を自社だけで完結するのが難しい場合は、営業コンサルティングなどの外部サービスを活用するのも有効です。
営業体制の課題整理から定着支援までをトータルで担ってくれるため、社内リソースの最適化と成果の最大化を同時に図ることで、セールスイネーブルメント構築の一助となります。
facingではセールスイネーブルメント構築を徹底サポート
セールスイネーブルメントとは、単なる営業人材の育成にとどまらない、営業組織全体の生産性と成果を高めるための取り組みです。
導入により、営業活動の属人化の解消や再現性の高い売れる仕組みの構築が可能になります。
セールスイネーブルメント構築を成功に導くためには、各部門が連携して組織的に取り組むことが求められます。
また、SFAやCRMと連携できるセールス・イネーブルメント・ツールや営業支援サービスの活用も有効です。
facingでは、営業支援のプロフェッショナルとして、現場に即した実行支援と仕組み化に徹底して取り組むことで、属人的な営業からの脱却を支援します。
さらに、インサイドセールスの体制構築から営業コンテンツ整備まで、ワンストップで支援可能です。
セールスイネーブルメント導入を検討している担当者の方は、まずはお気軽にご相談ください。
facingは成果の最大化を実現するためのパートナーとして、セールスイネーブルメントの定着と成果創出をサポートします。