人材派遣とは?仕組みや特徴、人材紹介・業務委託との違いをわかりやすく解説!
「人材派遣」というサービスは認識していても、その仕組みや他の雇用形態との違いまでは理解しづらい部分かもしれません。
人材派遣と一口に言っても「常用型派遣」や「紹介予定派遣」などにも分けられます。さらにまったく違うサービスでありながらよく混同されやすい「人材派遣」や「業務委託」もあります。これらの複雑さから、なかなか認識しきれていない方も多いでしょう。
業務の効率化は、現代の企業にとって大きな課題です。
昨今では、事業拡大に伴う人材不足の課題解決のため、また社内体制の見直しが必要という理由から、人材派遣を活用する企業は少なくありません。
企業が必要とする即戦力の人材を、必要に応じて活用できる人材派遣は、正社員採用に比べてもメリットとなることが多いため、ニーズが高まっています。
この記事では、人材派遣の基礎知識や具体的な仕組み、メリット・デメリット、さらに人材紹介や他の雇用形態との違いについてなど、役立つ基礎知識をわかりやすく解説します。
人材派遣の利用により、人材不足の解消や業務効率化につながります。ぜひ参考にしてください。
目次
人材派遣とは?
人材派遣サービスとは、人材を求める企業(派遣先)に対し、人材派遣会社(派遣元)が人材(派遣労働者)を派遣し労働力を提供するサービスのことです。
人材派遣が正社員やパートと最も異なるのは、「雇用契約を結ぶ会社」と「実際に働く会社」が違うという点です。
正社員やパートであれば、雇用契約を結んだ会社で働き、その会社から給料が発生しますが、派遣労働者は働く先の会社とではなく、まず派遣会社と雇用契約を結んだ上で派遣先企業に労働を提供します。
よって給与の支払いや福利厚生の提供などは派遣元である人材派遣会社が行い、企業は派遣会社と労働者派遣契約を締結します。
企業が人材派遣サービスを利用することで、正社員を採用するよりも素早く必要な人材を確保できるため、急な欠員や業務の繁忙期などに柔軟に対応することができるのです。業務効率化にも繋がるでしょう。
人材派遣のサービスは労働者派遣法で定められており、適用除外業務(港湾運送業務など)と士業以外のほぼすべての職種の業務に従事可能です。
また、派遣労働者と派遣先の企業との間でのトラブルや苦情への対応のため、「派遣元責任者」が1人以上選任されることも特徴です。派遣元責任者とは、労働者派遣事業者(派遣元事業主)に選任された、派遣労働者の適切な雇用管理や保護を担う人をいいます。
なお、人材派遣には契約期間の上限があり、以下のような制限があるので注意しましょう。
- 労働者個人単位の期間制限:派遣先の事業所における同一の組織単位において、同一の派遣労働者を受け入れることができる期間は原則として3年まで
- 派遣先事業所単位の期間制限:同一の派遣先の事業所において、労働者派遣の受入れを行うことができる期間は原則として3年まで
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人材派遣の仕組み
人材派遣は、大きく分けて以下の3つに分けられます。
- 一般派遣(登録型派遣)
- 常用型派遣
- 紹介予定派遣
特に説明がない場合、「人材派遣」という場合は、おもに仕事があるときのみ雇用契約を結ぶ働き方の一般派遣(登録型派遣)を指すことが多いですが、
人材派遣のなかには無期雇用で契約する常用型派遣や、派遣期間後に直接雇用されることを前提とする、紹介予定派遣などがあります。
それぞれ具体的にみていきます。
一般派遣(登録型派遣)
派遣先企業に就業が決まった人材と派遣社員が雇用契約を結ぶ、最も一般的な形態の派遣です。
人材派遣は人材の紹介までのスピードが即日~2週間程度なので、急な人材不足の解消に繋がります。有期雇用となり、同一組織での稼働は3年が最長契約期間のルールで、長期雇用は不可なのが注意点ですが、それ故に業務量の変動に合わせた契約が可能です。
常用型派遣
上記登録型派遣の場合、有期雇用で契約期間の上限があるので、派遣先の派遣契約が切れると派遣社員と派遣会社との雇用契約も解消となります。
一方「常用型派遣」は、派遣会社に正社員、または契約社員として無期雇用で契約を締結、在籍した上で、派遣先に派遣される形態です。
常用型派遣には専門性の高いスキルや知識を持つ人材が多いのが特徴で、派遣先企業で3年以上の勤務も可能なのが登録型派遣との大きな違いです。
紹介予定派遣
紹介予定派遣とは、派遣先企業で正社員または契約社員として直接雇用されることを前提に一定期間の派遣契約を結ぶ派遣形態です。
派遣先企業と派遣社員の双方が合意すれば、派遣されてから6ヶ月以内に正社員または契約社員となります。
企業側としては正社員や契約社員として雇用する前に労働者のスキルや相性が確認でき、労働者側は実際の職場や業務を経験してからその企業に在籍するか判断ができるため、双方にメリットがあります。
また、派遣先の企業が派遣スタッフとなる労働者と面接することは登録型派遣ではルール上禁止されていますが、紹介予定派遣の場合は派遣契約を結ぶ前に面接が可能な点も大きな違いでしょう。
人材派遣を活用する流れ
人材派遣を利用する際の一般的な流れ(登録型派遣・有期雇用の場合)は以下の通りです。
- 人材派遣会社への問い合わせ
- 人材派遣会社への条件の提示
- 派遣労働者のマッチング
- 派遣労働者の受け入れ準備
この中で特に重要なのが、人材派遣会社への条件の提示です。
改正労働者派遣法の施行にともない、派遣先企業は事前に派遣会社と候補者に待遇に関する情報を提供しなければなりません。
自社にとって最適な人材を派遣してもらうために、業務内容(就業時間、残業の有無)や希望条件(資格の有無、勤務経験の有無など)、収入や待遇などの雇用条件に加え、責任の程度や、賞与・各種手当・交通費支給・有給の取り扱いなどを明確にし、しっかりと認識を合わせるようにしましょう。
雇用条件について最初にしっかり条件提示を行っておかなければ後でトラブルになる可能性もあるので要注意です。
なお、労働者派遣契約の締結において、派遣先企業は派遣会社に「派遣受け入れ期間の抵触日」について通知する必要があります。「抵触日」とは受け入れ期間を超えた最初の日を指し、原則的にこの日以降の勤務は法律で禁じられている点を理解しておきましょう。
人材派遣とその他の雇用形態との違い
正社員や契約社員、パート従業員は企業と直接雇用契約を結びます。
一方で、人材派遣は人材派遣会社を介した間接雇用契約となりますが、指揮命令については派遣先企業から受けることになります。
労働契約においての期間の定めや業務範囲の制限の有無が双方の大きな違いです。
人材派遣と似たサービス内容との違い
人材派遣には、混同されがちな雇用・提携形態に「人材紹介」や「業務委託」がありますがサービスとしては明確な違いがあります。それぞれの違いや雇用条件を知ったうえで自社に必要なものを選ぶ必要があるでしょう。
それぞれ解説していきます。
人材紹介との違い
人材紹介とは、厚生労働大臣の許可を受けて職業を紹介する業態を指します。
人材紹介会社が仲介に入り、求人案件を持つ企業から依頼を受け、企業の求める条件に合った求職者を、紹介してほしい企業と繋げるサービスです。
企業と労働者のマッチングを行う点で仕組みは人材派遣と似ていますが、人材派遣との大きな違いは「企業と直接雇用契約を結ぶかどうか」にあります。
人材派遣の場合は、派遣元会社と派遣社員が雇用契約を結んだ上で派遣先会社へと派遣します。一方人材紹介の場合、紹介された社員と紹介先の企業が直接雇用契約を結びます。
人材派遣では、紹介先企業と派遣スタッフは直接の雇用関係ではないため、誰を派遣スタッフとして受け入れるかを選ぶことはできませんが(労働者派遣法第26条第6項)、人材紹介では面接が可能なのは異なる点の一つでしょう。
人材紹介でマッチングが成立し雇用契約を結んだ際には、成功報酬として紹介会社に手数料を支払うことになります。
昨今の企業の採用難が続く背景から、採用業務の手間を省くことができる人材紹介の利用は注目されています。
業務委託との違い
その他の似たような業態に業務委託があります。
業務委託では、「労働契約」ではなく、「業務委託契約」を締結し、業務を行います。
業務委託では発注者から受けた業務を主に個人で行います。業務そのものを外部に委託するため、雇用も業務も外部で遂行し、発注者の指揮命令を受けない「事業主」として扱われ、委託先と自社に雇用契約もないため、委託業務に関して直接指示することはできません。
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人材派遣を活用するメリット
人材派遣の仕組みは理解していても、自社にとってどんなメリットがあるのかイメージがわきづらいでしょう。
ここからは、人材派遣サービスを利用することでどのようなメリットがあるのかご紹介します。
- 必要な時に必要なスキルを持つ人材を活用できる
- 採用コストや工数を削減できる
- 労務管理の負担を抑えられる
具体的にみていきましょう。
必要な時に必要なスキルを持つ人材を活用できる
人材派遣の最大のメリットは、期間や業務内容など、必要なタイミングに応じて派遣社員を受け入れられる点です。
人材派遣は3~6ヶ月ごとに契約を更新するため、繁忙期の短い期間だけ人員を採用したり、社員の育休や産休、急な退職への対応などの一時的なリソース不足時に活用するなど、柔軟な対応が可能になり、人材不足の解消や業務効率化が期待できます。
また、人材派遣会社にはさまざまな経験やスキルを持つスタッフが登録しています。そのため、長期間の教育を自社が担うことなく、最小限の負担で即戦力人材の受け入れができるのが大きなメリットです。
採用コストや工数を削減できる
自社で社員採用を行う場合、募集から書類選考、面接、採用業務をはじめ、採用後の教育業務が必要になります。また、なかなか採用がうまくいかない場合は欠員期間が長くなり、負担が大きくなってしまうことも懸念されます。
その点、人材派遣を利用すれば、人材派遣会社が求人募集・面接などの採用活動を担ったうえで自社に合った人材を提案してくれるため、人材確保にかかるコストや工数が大幅に軽減され、より最適な人材に出会えることが期待できるでしょう。
労務管理の負担を抑えられる
人材派遣を利用する場合、派遣社員への給与支払いなどの労務管理や、社会保険の手続き、福利厚生の提供などは派遣元の人材派遣会社が対応します。そのため、派遣先の企業はこれらの業務に対応したり責任を負う必要がなく、労務管理の負担を抑えることができます。
派遣料金には人材派遣会社へのマージンが含まれているため、自社社員に支払う給与よりも割高に感じるかもしれませんが、マージンには派遣先企業が負担するはずだった保険料や福利厚生費など諸経費が含まれています。
そのため直接雇用よりも派遣を利用した方がトータルで費用が抑えられることが考えられます。
人材派遣を活用するデメリット
主にコストという面でメリットが大きい人材派遣サービスの利用ですが、覚えておくべきデメリットも存在します。具体的には以下の3点に注意しましょう。
- 契約にない仕事は依頼できない
- 帰属意識が低くなりやすい
- 自社にノウハウを蓄積しづらい
契約書にない仕事は依頼できない
人材派遣を利用する場合、派遣社員は人材派遣会社と雇用契約を結んだ上で派遣先企業に派遣されます。
直接の雇用ではない関係で、派遣社員の業務内容は、契約時に事前に合意したもののみに限定され、派遣契約書に定められた業務以外の業務を依頼することはできません。
自社社員のようにイレギュラーな業務を担当してもらうことができず、柔軟性に欠けるのがデメリットでしょう。そのため業務契約書の作成時にはよく吟味する必要があります。
ただし、派遣社員との間で同意が取れた場合は例外となるないため、派遣会社と派遣社員の双方に相談してみることが大切です。
さらに登録型派遣の場合、同一事務所・同一部署での勤務は最長で3年間という就業期間の定めがあり、派遣期間終了後に業務が滞ることを避けるため、正社員が行うようなコア業務を任せることはできない点もデメリットの一つと言えるでしょう。
帰属意識が低くなりやすい
人材派遣の社員は契約期間が決まっており、同じ場所で長く勤務しません。契約期間には制限があり、最初の時点から短期的な業務内容の依頼となります。そのため派遣労働者特有の問題として、帰属意識が低くなりやすい傾向にあります。
自社の社員同様に高い帰属意識を持って仕事に取り組んでもらうためにも、自社の社員と派遣社員を区別せず、同じ職場で働くいち社員として対等に接することが大切です。
自社にノウハウを蓄積しづらい
人材派遣サービスを利用することで、スキルや経験を持った人材をピンポイントで受け入れることができます。しかし派遣社員は契約上派遣期間が設けられているため、一定のタイミングで人材の入れ替わりが発生します。派遣社員自身が希望する場合は直接雇用への切り替えも可能ですが、必ずしも該当するわけではありません。
派遣社員にコア業務や重要業務を任せてしまったり、業務が属人的になってしまうと、社内でノウハウを蓄積しづらくなり、その派遣社員が抜けた際に企業への悪影響になりかねません。
基本的にはルーティーン化されている業務を担当させるのがおすすめです。
契約終了時には引き継ぎ業務も必要になるため、事前にマニュアルなどを作成しておくと良いでしょう。マニュアル作成業務から派遣社員を活用するのも有効です。
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人材派遣を受け入れる・活用する際の注意点
人材派遣を受け入れる際には次の点に注意が必要です。
- 日雇い・二重派遣禁止
- 派遣の受け入れが禁止されている業種がある
それぞれみていきましょう。
日雇い・二重派遣禁止
派遣社員の雇用期間を、1日毎や30日以内とする「日雇い派遣」は禁止されています。これは派遣労働者の保護と雇用の安定を目的に、2012年(平成24年)10月1日より制定された法律で定められたものです。
さらに二重派遣も職業安定法で禁止されています。
二重派遣とは、派遣元の人材派遣会社から派遣された派遣社員を、別の企業へ派遣する行為です。
これらは法律に反する部分になるため注意が必要です。
派遣の受け入れにおいての禁止業種がある
人材派遣のサービスは労働者派遣法で定められており、ほぼすべての職種の業務に従事可能ですが、労働者派遣法第4条と労働者派遣法施行令第2条によって、次の業種(適用除外業務)においては派遣社員の受け入れが禁止されています。
- 港湾運送業務
- 建設業務
- 警備業務
- 医療関係業務
- 士業(弁護士、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士など)
港湾運送業務、建設業務、警備業務に関しては、各業界の法律や制度によって派遣が一切禁止されています。
また医療関係業務や士業に関しては従業員同士の意思疎通が図りづらいため、人材派遣の利用は禁止となっています。
人材派遣について理解して事業拡大につなげよう
人材派遣サービスの仕組みや詳細については、知っているようで知らない部分も案外多いものです。派遣と一口に言ってもその中で契約形態の違いがあったり、似て非なる業種も存在します。
しかし、それらに関わる法律が違うこともあり、理解しきらないまま利用するのは非常に危険です。
人材派遣サービスの特徴や構造を理解し活用していくことで、専門スキルや知識を備えた派遣社員を必要なタイミングで必要な期間だけ受け入れることができ、企業の人材活用がより有効なものとなります。
うまく活用して、企業活動に活かしていきましょう。
ご相談事、お困りの事がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。