カスタマージャーニーとは?カスタマーサクセスでの活用法とチャーン防止のポイントを徹底解説
カスタマージャーニーとは、顧客がサービスを認知してから継続的な関係を深めていくまでの行動プロセスを示すことです。
ロイヤルティの向上やチャーンレートの改善を重要課題に挙げている企業は少なくありません。
「いつの間にかサービスを使われなくなり、解約につながってしまった」といった事象は、タッチポイントを把握できておらず、適切なフォローができていない可能性があります。
こうした課題の解決には、購買行動プロセスを可視化し、つまづきの早期発見や成功体験の蓄積ができる「カスタマージャーニーマップ」の作成が効果的です。
本記事では、カスタマージャーニーの概念からカスタマーサクセス領域における実践的な活用法、チャーン防止のポイントまでくわしく解説します。
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目次
カスタマージャーニーの概念
ここでは、カスタマージャーニーの概要を説明します。
- カスタマージャーニーは消費者の行動プロセスを理解するための視点
- マーケティング理論の進化とカスタマージャーニーの関係性
- 購買行動の変化と顧客体験の重要性
基礎を知ることで、カスタマージャーニーの重要性がわかります。
カスタマージャーニーは消費者の行動プロセスを理解するための視点
カスタマージャーニーとは、顧客がサービスを知り、成果を得て関係を構築するまでの一連の体験を「旅」としてとらえる考え方です。
2つの言葉を直訳すると「Customer(カスタマー)」は顧客、「Journey(ジャーニー)」は旅路を意味します。
つまり、カスタマージャーニーは、消費者の購買行動を目的地へたどり着くまでの道のりになぞらえて表現した言葉です。
カスタマージャーニーと同じマーケティング用語に、利用者に焦点を当てた概念である「ユーザージャーニー」があります。
どちらも顧客理解に欠かせない視点ですが、カスタマージャーニーは契約者を含む、より広い範囲を指す概念です。
マーケティング理論の進化とカスタマージャーニーの関係性
消費者の行動はマーケティング理論の1つとして形成されてきました。
1920年から2000年代までに、以下のようなモデルが提唱されました。
- AIDMA(1920年代〜):マス広告時代、認知から購入までのプロセスを一直線で整理
- AISAS(2000年代〜):情報検索や口コミ拡散が前提となるプロセスを定義
1998年頃に形成されたカスタマージャーニーは、AISASが浸透するなかで台頭し、2010年代以降、顧客体験設計の基盤として広く普及しました。
一部ではカスタマージャーニーが古いと言われていますが、実際は購買心理モデルを統合し、顧客体験全体を俯瞰する視点として進化し続けています。
現代のマーケティングにおいて不可欠な考え方です。
購買行動の変化と顧客体験の重要性
マス広告が主流だった時代は情報源が限られていたため、購買行動は興味から購入までが一直線でした。
マーケターは消費者の行動を可視化し、マーケティングファネルを用いて段階ごとに管理していました。
その後、デジタルマーケティングの普及により、情報源と選択肢が多様化した際に生まれた考え方がカスタマージャーニーです。
昨今の購買行動は、SNSや口コミといった外部刺激によって、興味が断続的に再燃する「パルス型消費行動」が増えています。
消費者はふとした瞬間に購買意欲を抱くため、どのタッチポイントでも期待に応える顧客体験設計が必要です。
企業はこうした環境変化に対応するために、顧客の思考と感情を可視化できるカスタマージャーニーの活用が欠かせません。
顧客理解に役立つ代表的な考え方

ここでは、顧客の心理変化をとらえるために活用されてきた代表的なフレームワークを紹介します。
- AIDMA【マスメディア時代の購買行動モデル】
- AISAS【デジタル時代の行動変化に対応したモデル】
- 5A【顧客との関係性を重視した行動モデル】
モデルの特徴や背景の理解は、現代の顧客体験設計において意識すべき点がわかります。
AIDMA【マスメディア時代の購買行動モデル】
AIDMAは、1920年代に提唱された購買行動モデルで、テレビCMをはじめとしたマスメディア前提の時代に広まりました。
消費者は以下の心理変化を経て、購入に至るとされています。
- A:Attention(注意)
- I:Interest(興味関心)
- D:Desire(欲求)
- M:Memory(記憶)
- A:Action(購入)
AIDMAが主流だった時代と比べて、現代は行動プロセスが複雑化しています。
一方で、注意から購入までをたどる考え方は、今もなおマーケティングの基礎として役立てられています。
AISAS【デジタル時代の行動変化に対応したモデル】
インターネットが普及すると、商品に興味を持った顧客はホームページや比較サイトを閲覧し、多様な情報源を行き来する行動に変化しました。
AISASでは、検索や共有するといった行動が考え方に組み込まれています。
- A:Attention(注意)
- I:Interest(興味関心)
- S:Search(検索)
- A:Action(購入)
- S:Share(共有)
口コミやSNSが影響力を持つ現代においては、顧客が感じた価値を共有・拡散されることを前提に体験を設計する視点が重要です。
5A【顧客との関係性を重視した行動モデル】
5Aはフィリップ・コトラーによるフレームワークで、購買後の推奨行動による顧客との循環的な環境強化を重視したモデルです。
コトラーは消費者の行動を以下のように細分化しています。
- Aware(認知)
- Appeal(訴求)
- Ask(調査)
- Act(購入)
- Advocate(推奨)
5Aは、サブスクサービスを中心に、ファン化がゴールとされる現代の購買行動にマッチした考え方です。
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顧客体験を設計・可視化する代表的な手法
ここでは、顧客体験を整理・分析し、改善につなげるための代表的な2つの手法を解説します。
- カスタマージャーニーマップ
- エクスペリエンスマップ
両者の違いを理解すると、より深い顧客体験設計ができます。
カスタマージャーニーマップ
カスタマージャーニーマップはカスタマージャーニーの概念をビジネスで活用できる形に落とし込んだフレームワーク(framewaok)です。
カスタマージャーニーはあくまで顧客体験のとらえ方であり、実務で活用するためにマップ化が欠かせません。
カスタマージャーニーマップを作成することで、顧客が商品を認知してから継続利用に至るまでの行動・心理・感情の変化を時系列で可視化できます。
営業部門やカスタマーサクセスが、どこに課題や価値提供のチャンスがあるかを発見しやすくする効果的な手段です。
エクスペリエンスマップ
エクスペリエンスマップとはサービス接点を問わず、体験全体を俯瞰する手法です。
もともとは、UX(User Experience:ユーザーエクスペリエンス)デザインの思想を基礎とし、顧客行動の背後にある理由を探ることに焦点を当てています。
カスタマージャーニーよりも視野が広く、顧客の背景となる暮らし・環境・価値観まで含めて理解します。
エクスペリエンスマップの活用は、潜在ニーズの発掘や顧客の心を動かす訴求を見出せる点がメリットです。
カスタマージャーニーとエクスペリエンスの考え方を組み合わせることで、現状と未来の両方の視点を持てるため、顧客体験を最大化できます。
カスタマージャーニーを可視化するメリット

この章では、カスタマージャーニーの見える化によって得られる、3つの主なメリットを紹介します。
- タッチポイントを把握できる
- 他部署の担当者が共通認識を持てる
- 売上につながるマーケティング戦略を立案できる
カスタマージャーニーは顧客行動を最適化し、適切な戦略立案につながります。
タッチポイントを把握できる
カスタマージャーニーによる消費者行動の整理は、顧客が企業と接触するタイミングが明確化します。
顧客は広告・WEBサイト・営業・口コミといった複数の接点を行き来しながら購入や利用へ進みます。
カスタマージャーニーで行動が可視化できていなければ、顧客がどこで迷子・離脱しているか把握できません。
離脱ポイントを発見し、改善すべき点に施策を打つことで、企業は顧客行動を最適化できます。
他部署の担当者が共通認識を持てる
カスタマージャーニーマップの共有は部署ごとに偏っていた顧客理解が統一され、一貫性のある対応につながります。
本来、マーケティング・営業・カスタマーサクセスは連携が必須な部署です。
しかし、部署ごとにKPIや顧客と接するフェーズが異なるため、顧客体験が分断されてしまうことが少なくありません。
共通の認識が持てていれば、顧客が成功に至るまでの道筋が見えやすく、部署間の引継ぎミスや食い違いを減らせます。
企業は顧客との信頼関係を構築し、満足度や継続利用向上が見込めます。
売上につながるマーケティング戦略を立案できる
カスタマージャーニーマップで体験全体を俯瞰すると、顧客が意思決定するポイントが明確になり、優先すべき施策に専念できます。
顧客行動が把握できていない施策運用は広告費が膨らみ、成果が見えにくくなる傾向にあります。
無駄なコスト発生は企業にとって望ましくありません。
顧客は商品を購入することで得られる価値が高まると、継続利用や口コミ・紹介を行い、LTV(顧客生涯価値)が最大化します。
特にSaaSやサブスクサービスでは、体験価値を引き出すための施策が売上成長に直結するため、カスタマージャーニーマップは欠かせない手法です。
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カスタマージャーニーマップの作り方
ここでは、実際の業務に生かせるカスタマージャーニーマップの作り方を5つのステップに分けて解説します。
- マップ全体を設計する
- ターゲット像を明確にする
- フェーズごとに行動・思考・感情を洗い出す
- KPIを設定する
- 顧客接点と課題を特定する
手順に沿うことで、担当者はスムーズにカスタマージャーニーマップを作成できます。
①マップ全体を設計する
まずはカスタマージャーニーマップの基本構造を決めます。
カスタマージャーニーマップは、横軸に各フェーズ、縦軸に顧客の態度変容やKPIを配置するのが一般的です。
具体的な項目は以下のとおりです。
- 横軸(フェーズ):認知・情報収集・比較検討・購入・利用・継続
- 縦軸(顧客の変化):行動・思考・感情・接点・課題・KPI
あらかじめテンプレート化しておくことで、部署をまたいだ共通のフォーマットとして活用でき、スムーズに更新できます。
②ターゲット像を明確にする
次に、各フェーズにおいて主役となる人物像(persona:ペルソナ)を設定します。
ペルソナ設定は年齢・役職・行動の傾向といった属性を具体化します。
サービスの契約者と利用者が一致していることが多いBtoC企業とは異なり、BtoB企業では注意が必要です。
BtoB企業は、サービスの検討から意思決定者、利用者が存在するため、役割ごとにペルソナを設定しましょう。
③フェーズごとに行動・思考・感情を洗い出す
ペルソナを設定したあとは、フェーズごとに顧客の行動や心理の変化を洗い出します。
行動・思考・感情の整理は、課題設定や施策立案の土台となるため、重要な工程です。
1つのシナリオを描くように、顧客の不安や願望を書き出すことで、購買行動の流れがイメージしやすいためおすすめです。
各フェーズの業務担当者は、顧客が企業のサポートを必要としているタッチポイントを把握できます。
④KPIを設定する
次はカスタマージャーニーマップのタッチポイントごとに、目標とする成果を数値化しましょう。
KPI設定は実態に即した管理ができ、チャーンの兆候を見逃しにくくなります。
KPIは以下の2つに分類すると精度が高まります。
- 先行指標:成果を得る前の指標
- 遅行指標:成果を表す指標
各フェーズごとに指標の最低ラインと理想値を設定しておくことで、先回りした対策ができます。
⑤顧客接点と課題を特定する
ここではペルソナの行動・心理変化で洗い出したタッチポイントをもとに、顧客がつまづく要因を明確にします。
以下の観点で課題を特定します。
- 行動:どのタッチポイントで止まっているか
- 思考;何を疑問に感じているか
- 感情:どんな不安・不満が発生しているか
特定した課題は、改善の仮説化・対策・効果検証まで設計することが重要です。
カスタマーサクセスでのカスタマージャーニーの活用法

この章では、カスタマージャーニーを実際のカスタマーサクセス業務に活かす方法を3つの視点から具体的に解説します。
- オンボーディングで顧客体験を最適化する
- ペルソナをもとにパーソナライズされたアプローチを設計する
- ロイヤルティを高めるコミュニケーション施策を打つ
カスタマーサクセスはカスタマージャーニーを基盤とし、サービスの継続利用やロイヤルティ向上につなげることが大切です。
内部リンク:カスタマーサクセスの役割とは?期待される効果や欠かせない業務、ポイントを解説
オンボーディングで顧客体験を最適化する
カスタマージャーニーがあることで、カスタマーサクセスは顧客の不安ポイントを先回りしてサポートできます。
顧客はサービスの効果を実感するまでに期待と不安を何度も行き来します。
そのため、カスタマーサクセスが感情の揺れを事前に察知し、成功体験へ導くことが重要です。
導入初期は顧客満足度とサービスの定着率に最も大きな影響を与えるフェーズであり、解約阻止にもつながります。
内部リンク:カスタマーサクセスにおけるオンボーディングとは?メリットや導入するステップ、成功事例を紹介
ペルソナをもとにパーソナライズされたアプローチを設計する
カスタマージャーニーを活用し、カスタマーサクセスはユーザーに応じたコミュニケーション設計や成功に必要な支援の個別最適化を図ることが大切です。
顧客の役割や目的によって、求める支援も異なります。
カスタマージャーニーを作成した初期は、設定したペルソナの行動・思考・感情がズレてしまっていることも少なくありません。
定期的に改善や検証を繰り返し、カスタマージャーニーマップを見直すことで、適切なアプローチ設計ができます。
ロイヤルティを高めるコミュニケーション施策を打つ
カスタマーサクセスは利用が定着した顧客に対して、サクセス支援を軸とした関係構築が重要です。
カスタマージャーニーマップによって、紹介につながる感情の変化やファン化を促す接点を可視化できます。
顧客からのフィードバックは、的確に反映していくことがポイントです。
アップセルを狙った営業ではなく、ロイヤルティ向上のサポートがリピートや他者の紹介を生み出します。
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カスタマージャーニーで解約を防ぐポイント
ここからは、カスタマージャーニーを活かして、チャーンレートを下げる3つのコツを解説します。
- チャーンの要因をKPIと行動分析から紐解く
- チャーンの兆候を時系列で早期発見する
- 継続施策により顧客エンゲージメントを高める
解約阻止に重要なことは、カスタマージャーニーをもとに先回りした対策です。
チャーンの要因をKPIと行動分析から紐解く
顧客が離脱に向かうパターンは、カスタマージャーニー上の行動データに現れます。
解約を防ぐには感覚ではなく、KPIに基づいたデータでの原因特定が不可欠です。
カスタマージャーニーマップをたどることで、成長が止まったタイミングや改善すべきタッチポイントが明確化します。
カスタマーサクセスは解約理由アンケートを待つのではなく、利用頻度や返信の遅れといった行動から顧客の感情を読み解くことが重要です。
内部リンク:カスタマーサクセスで設定すべきKPIとは?重要な11のKPIとその目的や設定ポイントをくわしく解説
チャーンの兆候を時系列で早期発見する
先行KPIと成果KPIの2つに分けた指標から、適切なタイミングでカスタマーサクセスの介入を行うことでチャーンの兆候を早期に発見できます。
先行KPIはCRMに連携し、異常値を自動検知できるようにすると、解約の初期サインをとらえる精度が向上します。
例えば、ログイン頻度やコア機能の利用が大きく低下している場合はアラート通知・自動フォロー施策が効果的です。
CRMは顧客との関係記録やステータス管理、行動データの観察を担うため、他部署間の連携を効率化できます。
継続施策により顧客エンゲージメントを高める
チャーンレートを下げるためには、顧客の成功体験を積み重ねることが最も効果的です。
顧客は成功を積み重ねるごとに他製品への乗り換え意欲が下がり、ファン化します。
カスタマージャーニーによって戦略を設計すると、次のような施策を打てます。
- フェーズ別に活用支援コンテンツを最適化する
- 活用停滞前に次の成功行動を案内できる
カスタマージャーニーは顧客が成功を感じる瞬間を明確にできるため、価値訴求がスムーズに進みます。
facingは一連のカスタマーサクセス業務を顧客の視点で支援します
カスタマージャーニーを活用した顧客体験を成功に導くためには、分析・施策設計・実行・改善の一気通貫した体制構築が不可欠です。
しかし、多くの企業では、カスタマーサクセス人材の採用や育成が追いつかない状況や現場が忙しく、改善施策が後回しになりがちです。
その結果、解約の兆候に気付いても対策が遅れ、チャーンレートの改善が進まないことも少なくありません。
facingでは、カスタマーサクセス業務の課題を顧客視点から解決し、解約阻止やチャーンレート改善をサポートします。
カスタマージャーニーを起点に、コンサルティング・BPO・インサイドセールス支援を行える点がfacingの強みです。
自社サービスの継続率やロイヤルティ向上でお悩みの担当者は、ぜひお気軽にご相談ください。