カスタマーサクセスで設定すべきKPIとは?重要な11のKPIとその目的や設定ポイントをくわしく解説

カスタマーサクセス
カスタマーサクセスで設定すべきKPIとは?重要な11のKPIとその目的や設定ポイントをくわしく解説
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カスタマーサクセス(Customer Success)は、「顧客の成功」を意味します。
しかし、直訳の「顧客の成功」だけでは説明不足です。

本稿ではカスタマーサクセスの基礎知識と、カスタマーサクセスで設定すべき11のKPIについて、くわしく解説していきます。


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目次

カスタマーサクセスとは

「カスタマーサクセスとは、顧客に成功体験や満足度の高い体験を提供することで、長期的に自社サービスを愛用してもらうための役割を担うもの」と覚えておくとよいかもしれません。

特に昨今、多様なビジネス商材がある中で、サブスクリプションビジネスのように月次で収益を発生させるビジネスモデルが増えています。
そのため、LTV(顧客生涯価値)の向上が必要不可欠になっており、その意味でCX(カスタマーエクスペリエンス)の改善や、カスタマーサクセスの運用は企業にとって重要な課題となっています。

カスタマーサクセスの役割

カスタマーサクセスが目指すべきゴールは明確です。
それは、自社の利益を最大化させることです。
そのためには顧客がサービスや商品に愛着を持ち、ロイヤルカスタマーとして継続的に利用する状況を作ることが必要です。
なので、満足度を上げる、解約率を下げる、アップセル・クロスセルするなどの手段があるのです。
そしてこれらの施策を検討し、実行することこそ、カスタマーサクセスの役割と言えます。

カスタマーサクセスでKPI設定が必要な理由

カスタマーサクセスの施策には様々な方向性の打ち手が存在します。
これは大企業からスタートアップ企業まで、カスタマーサクセスでやりたいことだけ決め、KPIを設定しないでプロジェクトを進めることがあります。
これは絶対におすすめしません。ほとんどの場合で不具合が発生して失敗します。
プロジェクトのKGIは何なのか、設定するカスタマーサクセス施策は何のための施策で、どこにKPIを置くのか考えましょう。
そして定量的な指標を立て、その目標に対してまっすぐシンプルな施策を実施することが成功の鍵です。

混同されがちなCSに注意

CSという略称は、現在でこそCustomer Successの意味として知る人を広く獲得しましたが、業界や顧客によってはまだ別の意味に捉えられることもあるので注意が必要です。
当たり前だと思って話していたら、実はズレていたということもあり得ます。
そうしたトラブルが発生しないよう、まずは知識としてCSの略称例を把握しておきましょう。

一般的にC=Customerの意味で話される場合は、CSが下記の4パターンいずれかを指します。

  •  Customer Success:カスタマーサクセス / 顧客の成功
  •  Customer Satisfaction:カスタマーサティスファクション/ 顧客満足度
  •  Customer Service:カスタマーサービス / 顧客へのサービス
  •  Customer Support:カスタマーサポート / 顧客へのサポート

「CS」はBtoBの業態では「カスタマーサクセス」の意味で取られることが多い一方、消費者と直接的に関わる業態では「顧客満足度」の意味で語られることが多いことも覚えておくと良いでしょう。
これが企業内の部署サイズの話やサービスなどの詳細な話になった時には「カスタマーサービス」や「カスタマーサポート」の意味としてCSが使われることもあります。

略語は非常に便利ですが、業界や職種によって受け取り方が変わる可能性がある、ということを認識し、適切に活用していきましょう。

カスタマーサクセスで重要な11のKPI

チャーンレート(Churn Rate)、リテンションレート(Retention Rate)、オンボーディング率、アップセル・クロスセル率(拡大)について書かれた図解

カスタマーサクセスを考える際、設定すべきKPIは何か、相互の関連性も含めよく検討しましょう。
特に、「事業の運営において、何のためのKPI設定なのか」を考えることが重要です。
ここでは、カスタマーサクセスの達成指標として使用されるKPIとその意味をまとめました。

カスタマーサクセスで重要なKPIその1
チャーンレート(Churn Rate)

チャーンレートは(Churn Rate)は「解約率」を意味します。
特定の期間内に自社サービスの利用を辞めた人の割合を表す指標であり、SaaSや定期的な購買系の商品などのサブスクリプションサービスにおいては特に重視されるKPIです。
サービスをチャーンされないためには何ができるのか、何が原因でチャーンされるのかなど、チャーンレートが高い場合には迅速な対応が必要です。

また、解約率は2つの指標で見ることが可能です。
顧客数をベースに考えるカスタマーチャーンレート、そして、売上をベースに考えるレベニューチャーンレートです。 
料金プランが1プランだけの場合はカスタマーチャーンのみの分析で問題ありませんが、金額の異なる複数プランがある場合、レベニューチャーンを分析して影響を算出した方が実態に即した分析を導くことができます。
それぞれの計算式は以下のようになります。

  1. カスタマーチャーン(Customer Churn):顧客数(解約数÷新規契約数)
  2. レベニューチャーン(Revenue Churn):売上高(単価×解約数)÷売上

カスタマーサクセスで重要なKPIその2
リテンションレート(Retention Rate)

リテンションレート(Retention Rate)は「定着率」を意味します。
特定の期間内での、自社サービスの継続率や定着率を数値化した指標であり、「既存顧客維持率」と言われることもあります。
顧客のロイヤルティを維持するために何が必要か、カスタマーエクスペリエンス(CX)の改善には何をすべきか考える際の指標となります。

  • リテンションレート(Retention Rate)=サービスの定着率および継続率

カスタマーサクセスで重要なKPIその3
オンボーディング率

オンボーディングとは、顧客が自社のサービスの導入から定着までの期間を意味します。
オンボーディングの定義はサービスや商品によって異なるため、オンボーディング率を導く場合には事前に「どの状態になればオンボーディング完了とするのか」を明確にしておく必要があります。
よく「初期設定完了=オンボーディング完了」とするサービスもありますが、それで本当に顧客は使いこなせるのか、サービスに定着したと言えるのか、など考える余地があるのです。
このオンボーディングを雑にすると、各種SaaSをはじめ、解約率の上昇に影響するため丁寧な設計が必要となります。

  • オンボーディング=サービスの定着を促進する取り組み

カスタマーサクセスで重要なKPIその4
アップセル・クロスセル率(拡大)

カスタマーサクセスにおけるアップセルとは、自社サービスを利用中の既存顧客に対し、「機能やサービスのアップグレード」や「アカウント数増加」などによる単価アップを意味します。
一方、クロスセルは既存顧客に対し、別の商品やサービスを購入いただくことでの単価アップとなります。
これらは提供するサービスに複数のプランがある場合にKPIとして設定される傾向にありますが、顧客ニーズを無視するむやみなアップセルやクロスセルのアクションはダウングレードや解約につながるリスクもあるため注意が必要です。
こうした単価アップの活動を総称し、Expansion(拡大)と呼ぶこともあります。

  • アップセル=購入済の既存サービスや商品の追加購入
  • クロスセル=未購入の関連サービスや商品の追加購入

カスタマーサクセスで重要なKPIその5
LTV(Life Time Value)

LTV(Life Time Value)、NRR(MRR昨対)、CSAT(顧客満足度)、NPS(顧客推奨度)、アクティブ率
ツール滞在時間、商談獲得数と書かれた図解

LTVは顧客生涯価値と呼ばれ、SaaS系のサブスクリプション型のビジネスモデルにおいて非常に重要な指標となります。
一人、ないし一社の顧客における、サービス利用開始から解約までを顧客の生涯(ライフサイクル)と定め、その一定期間で顧客が自社にもたらす利益を算出する指標です。
一般的に、ロイヤルティの高い顧客ほどLTVが大きくなります。
そのため、カスタマーサクセスの施策を検討する際は、長期間かつ安定的に収益を見込めるLTVの最大化をゴールとする場合もあります。
そして何をすればLTVが最大になるのか、という目標達成の手段としてその他のKPIを設定するパターンもあると覚えておきましょう。

  • LTV(Life Time Value)=顧客がサービス利用期間中にもたらす利益の総額

カスタマーサクセスで重要なKPIその6
NRR(MRR昨対)

NRR(Net Retention Rate / Net Revenue Retention)は「売上継続率」と呼ばれます。
現在の売上を前年の同月や前月の売上と比較した際の増減の差を見る指標となります。
SaaSやサブスクリプション系のビジネスモデルにおいては、MRR(月次経常収益)のように、月毎に繰り返し得られる収益が非常に重要です。
NRRの視点では、このMRRの獲得をどこまで維持できるかという視点で予測を立てるものになります。

  • NRR(Net Revenue Retention)=顧客の売上増減の割合を見る維持率
  • MRR(Monthly Recurring Revenue)=毎月繰り返し入る収益

カスタマーサクセスで重要なKPIその7
CSAT(顧客満足度)

CSAT(Customer Satisfaction)は顧客満足度を図る指標として使われます。
前述の通り、顧客満足度をCSと表記して呼ぶ企業もあるため混同されないように注意しましょう。
CSATはアンケート調査などを活用し、定量と定性で顧客の声を集めます。
自社サービスの満足度を調査する際、部門毎に分けて調査することで満足度の実態を調べたり、施策達成のKPIとして設定したりするなどで活用されます。
また、特定のシーンを抽出した満足度だけでなく、一定期間を統合した満足度を出すなど測る方法は様々ありますので、測定したい数値に合わせて活用しましょう。

カスタマーサクセスで重要なKPIその8
NPS(顧客推奨度)

NPSはNet Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)の頭文字を取った言葉であり、顧客ロイヤリティを測るための指標です。
NPSの計測にはカスタマーに対して以下の質問を実施します。

<質問>

Q:その企業および製品を友人や同僚に推奨する可能性はどの程度ありますか?

<回答方法>

0~10点の11段階で回答
その回答をもとに以下の評価を行います。

  • 0~6点:批判者 商品に不満があり、ネガティブな声を広める恐れがある
  • 7~8点:中立者 商品に満足しているが、他社製品でも問題ない
  • 9~10点:推奨者 顧客ロイヤリティが高く、自ら購入と他者への推奨を行う

<NPSスコアの計算式>

推奨者の割合 ― 批判者の割合=NPSスコア(-100%〜100%)

NPSは業績との関連性もあるロイヤルティ測定指標です。
類似する指標に「CSAT(顧客満足度)」がありますが、CSATよりもNPSの方が「業績との関連性」が高いと言われています。

カスタマーサクセスで重要なKPIその9
アクティブ率

アクティブ率は「どれだけのユーザーがツールやサービスをアクティブに利用しているか」を表す指標であり、「アクティブユーザー(Active User)」と言われることもあります。
SaaSなどのサブスクリプション系サービスの場合、ユーザーが休眠状態、もしくはサービスをあまり使わない状態は満足度の低下や離脱に直結します。
そのため、特に企業へのツール導入では、日々の業務でいかにツールを使用してもらえるように、業務フローや運用ルールを定め、アクティブ率を高めることが重要になります。

カスタマーサクセスで重要なKPIその10
ツール滞在時間

こちらもSaaS系のクラウドサービスで重要になる指標です。
「セッション時間」と言われることもあり、「サービスを利用している時間」を意味します。
アクティブ率と同様の考え方となりますが、ツール滞在時間(セッション時間)が短いほど解約リスクが高まり、滞在時間が長いほど、サービスへの依存度が高く、解約リスクが低くなります。
ただし、ツール利用にあたり、単純に工数が多く時間がかかってしまうのか、不具合が解消されないために滞在時間が伸びてしまっているのか、便利で滞在しているのかは考える必要があります。
顧客ロイヤリティを高め、ロイヤルカスタマーを増やしていくためにも、ここで示される数字と実態の関連性がどこにあるのか丁寧に分析をしてナレッジを蓄積していきましょう。

カスタマーサクセスで重要なKPIその11
商談獲得数

カスタマーサクセスはセールスではありませんが、商談を獲得していくことが可能です。
特に顧客関係管理の領域では、失注顧客や長期検討顧客などの見込みリードに対してアプローチし、再度セールスの領域に戻すことも仕事の一つです。
こうした見込みリードの起点からどれだけ商談を獲得できるか、という視点もKPIとして設定し、運用することができます。
このような顧客管理のアクションでは、効率化にも意識を向け、応対の属人化が発生しないよう管理ツールなども参考にしながら仕組みを検討しましょう。

ステップメールの運用

CS部門で商談を獲得する際、よく使われる手法がステップメールの運用です。
事前にテンプレートと配信の必要条件を設定し、該当する顧客がその状態になったらメールが自動で配信されるという仕組みです。
すぐに成果が出るものではありませんが、見込み顧客に対してアクションを継続することは事業や売上の拡大に効果を発揮します。
その意味でも、顧客管理はプロセス毎に丁寧に行い、アプローチの用意をしておきましょう。


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カスタマーサクセスのKPIを設定する際の注意点

カスタマーサクセスのKPIを設定しているビジネスマン

カスタマーサクセスで達成指標とすべき11のKPIが分かったところで、実際のKPI設定の際にどのようなことを注意しすればいいのでしょうか。

自社に合ったKPIを設定する

KPI(Key Performance Indicator)はあくまでも達成すべきゴールに至るための中間目標です。
一般的にKPIの先にはKGI(Key Goal Indicator)という最終目標が設定されています。
企業として、一定の期間で達成すべき最終目標が設定され、そこに至るために必要な中間要素をKPIとして設定するのです。
まずはゴールを定め、そこを起点に逆算する形で必要なKPIを設定し、迅速にPDCAを回しながらプロジェクトを進めることが重要です。

ゴールから逆算したKPIを設定する

KPIは感覚や感情で設定するものではありません。
あくまでも打ち手の一覧から戦略を立て、数値を分析し、ゴールから逆算して設定されるものです。
「とりあえずこのくらいやろう!」というような感情的な数値を設定しても意味がありません。
達成不可能なKPIを設定したところで、目標が形骸化するだけです。
何のためのカスタマーサクセスなのか、目的や目標をよく理解して設定しましょう。

カスタマーサクセスのKPIを達成するために

カスタマーサクセスのKPIの多くは、「どうやって顧客に長く使ってもらうか」が重要な視点になります。

KPI達成のための施策例

オンボーディング支援

「使えない」「使われない」は解約や離脱の最大要因です。
そうした利用意欲の減少を起こさぬよう、サービスの契約から導入、運用定着までのフェーズを丁寧に支援するのがオンボーディングのサポートです。
システムやサービスを販売して終わりではなく、オペレーターが伴走しながら応対することでバリューを発揮します。
導入時の信頼関係の構築は、チャーンレートを低下させるだけでなく、上記のほぼ全てのKPI指標に影響を与えます。
また、機能的価値だけでなく、感情的価値としても効果が期待できます。

ユーザーコミュニティ

ユーザー同士の交流を深め、エンゲージメントを高めます。
それぞれの顧客の課題解決や導入事例、成功事例の共有など、顧客間のつながりを強化しながら継続や拡大を促すアクションを実行します。
顧客に新たな発見や価値を提供することで、業務改善や課題解決のメリットを享受することでロイヤルティを高めてもらうことを期待します。
こうしたイベントのコンテンツが充実することが、拡大の後押しにもつながることがあります。

顧客との継続的な接点設計

顧客との接点を能動的に作り、課題解決や不満の解消、バリュー提供を働きかけます。
例えば「導入初期で失敗すると離脱のリスクが高まるため、まず1か月はサポートが必要だろう」という想定のもと、定期的に連絡をする仕組みを設計し、CS部門で運用するなどの方法があります。
複数の部門と連動できる場合は、営業やマーケティングなども連携しながらアクションを計画することも有効です
こうした顧客との接点はアクティブ率の上昇にも効果を発揮します。


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カスタマーサクセスのKPIを活用して事業活性化を

カスタマーサクセスにおいて重要なことは、KPIを設定することではなく、適切に設定したKPIの達成を通して利益を上げることにあります。
また、既存顧客の継続コスト、拡大コストは新規顧客の獲得コストの1/5と言われています。
この5:1の法則を考えると、獲得した顧客を大事にすることの重要性が見えてきます。
利益やコストの話になると、営業やマーケティングの話になりがちですが、the Model(ザモデル)の観点でビジネスモデルの全体を見直すと、カスタマーサクセスの重要性が理解していただけると思います。
事業をより良い形で拡大するためにも、改めてカスタマーサクセスに力を入れてみてはいかがでしょうか。

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